自閉症スペクトラムを理解する特徴②感覚過敏 脳機能障害 併用症 

発達障害
Group of diverse kids with blank speech bubbles

自閉症スペクトラムを理解する 特徴① では自閉症スペクトラムの子どものコミュニケーションや対人関係の具体的なつまずき方を特徴として記事にしました。

自閉症スペクトラムを理解する 特徴②の当記事では、色々な感覚過敏によって困っている子がいる事や原因といわれている脳の機能障害について、併存症や遺伝子のかかわりについて触れていきたいと思います。

Contents

自閉症スペクトラムって?特徴

発達障害の中に分類されています。人と上手にかかわれない障害。
自閉症スペクトラムは自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群などの名称がつけられていた自閉性障害の仲間を区別せずに、ひとつの障害としてとらえるためにつけられた総称です。

 発達障害

  • 知的障害(知的発達症)
  • 自閉症スペクトラム(自閉症スペクトラム症)
  • ADHD【注意欠陥多動性障害】(注意欠如多動症
  • 学習障害【LD】(限局性学習症
  • 発達性協調運動障害(運動症)

いろいろな感覚過敏がある

視覚過敏があると…

たくさんの物の中から1つの物を見つけ出すことが苦手です。

蛍光灯のちらつきが気になったり、白い紙に書かれた黒い文字のコントラストをきつく感じたり(教科書の文字とか)、人の顔がピカソの二次元のモザイク画の様に見えたりすることがあります。

そのため集中できなかったり、文字が読みにくかったり、目線を合わせることが難しい場合があります。

触覚過敏があると…

洋服のタグ、靴下や肌着の縫い目、粗い生地に肌が触れると、ヒリヒリ感じたり、焼けつくような痛みを感じたりします。

そのため着心地のよい服をずっと着続けたり、刺激のある服は脱ぎたがったりすることがあります。

肌が人や物に少し触れるだけでも痛くてたまらない場合もあります。

そのため友達の手が何気なく肩に触れただけでも酷く痛がる様子を見せることもあります。

圧覚過敏があると…

優しく抱きしめても、窒息するような強烈な圧迫感を感じたり、手を軽く握られただけでも強い痛みを感じたり、帽子を被ると、頭がひどく締め付けられるように感じたりすることがあります。

そのため親の愛情から子どもを抱きしめても、カラダをのけ反らせて嫌がることもあります。

その一方できつく抱きしめられることで安心するという子もいます。

聴覚過敏があると…

サイレンや警告音、楽器の音、怒鳴っている声、赤ちゃんの泣き声、犬の吠え声など、大きな音や甲高い音が苦手です。

まるで虫歯の治療で歯科用ドリルが神経にあたったかの様な強烈な痛みを感じたり、ごう音が鳴り響いているように感じたりすることがあります。

そのため大勢の人がいるような騒々しい場所では、たまらなくなって耳を塞ぎ周りの音をシャットアウトしようとしたり、常同行動によって安心しようとしたりすることもあります。

また早口の人の話が聞き取りにくかったり、たくさんの音の中から1つの音だけを選び出して聞くことが難しかったりします。

嗅覚過敏があると…

給食室のにおいや運動道具が保管されている倉庫のにおいなど、強いにおいが苦手で、場合によっては吐き気をもよおすことがあります。

パンの焼ける美味しそうな香ばしいにおいでも非常につらく感じる場合もあります。

一方で、馴染みのあるものは安心できるため、食べ物から服まで何でも臭いを嗅いで、周囲の状況を確かめようとすることもあります。

味覚過敏があると…

一般的な味付けを濃く感じて、薄味の物を好んだり、特定の食感や温度、軟らかさやかたさの食べ物だけを食べ続けたりすることがあります。

食べ物によっては砂を噛んでいるように感じたり、強いネバつきを感じたりすることもあります。

見た目にこだわりを持っている場合もあり、特定の色の食材や同じパッケージの商品だけを食べ続けるために、偏食となる場合もあります。

痛覚鈍感だと…

痛覚が鈍感で身体イメージが希薄な場合は痛みを感じにくくなっていることがあります。

血がにじむほど肌をかきむしったり、自分の腕を強くかんだりすることがあるかもしれません。

ケガをしてもあまり痛がらなかったり、大きなケガをしてもケロっとしていたりすることもあります。

またパニックになったときに、自分の身体を傷つけたり痛めつけたりする行為(自傷行為)として現れることもあります。

平衡感覚不全(へいこうかんかくふぜん)

耳の奥の内耳にある身体のバランスを保つセンサーが上手く働かないために、姿勢が崩れたり、急に机に顔を伏せたりしてしまう事があります。

そのため不器用だったり、運動が苦手だったりしますが、こうした様子は周りから見ると「やる気がない」「だらけている」といった印象を持たれてしまい誤解されやすいです。

また、グルグル回っても目が回りにくく、気持ち悪くならない子もいます。

その他

同時に複数のことをするのが苦手

私たちは当たり前のように、同時に複数の情報を処理しています。

例えば、授業中に黒板の文字を目で追いながら、自分のノートに黒板の内容を書き、同時に先生の話を耳で聞くという事ができます。

自閉症スペクトラム症の特性を持つ子は見る事と聞くことを同時にするような、一度に複数の事をするのが苦手です。

人の話を聞くなど耳を使っている時には目からの情報が入りにくく、

本を読むなど目を使っているときは耳からの情報が入りにくいのです。

その一方で一つの情報に集中することは得意です。

先生が「これから大切な事を黒板に書くので見ていてください」と言って黙って黒板に書き、「さあこれを自分のノートに書き写してください」と言えばやることはひとつずつなので、スムーズに作業できます。
こうした苦手さは練習で克服できるものではないので、その子の得意な能力を生かしながら、必要な支援をすることが大切です。
注意の切り替えが苦手

自閉症スペクトラム症の特性を持つ子は、急に話しかけると最初の方の言葉を聞き逃してしまうこともあります。

例えば、「公園に行きましょう」と声をかけても、その子がおもちゃで遊ぶことに集中している場合は、切り替えがうまくできません。

最初の「公園」の部分を聞き逃してしまう事もあるので、このような特性は日常生活では「不注意」という印象にもつながりがちです。

用途がたくさんあると混乱する

学校はスペースが限られているため、教室を色々な用途で使用します。

勉強、給食、遊ぶ、体育の前は着替えるため更衣室としても使用します。

私たちはそれほど意識せずに、同じ場所でも時と場合によって、教室を別の用途で使う事がある事を理解しています。

同時に勉強する目的で教室を使うときは、食事をしたり、遊んだりしてはいけないことも過去の経験から理解しています。

しかし、自閉症スペクトラム症の特性を持つ子は、目に見えないものの理解や、過去の経験を集めて概念化することが苦手なので、「いま何の目的で使用しているのか」を見てわかるように配慮してあげないと混乱する場合があります。

終わりがわからない

自閉症スペクトラム症の特性を持つ子は、何時何分という時刻を読むことはできますが、時間の経過を感覚的につかむことが苦手です。

授業は〇時〇分までです」と言われても、時間は目に見えないため、今行っている活動が永遠に続くように感じられ、不安になってパニックを起こしてしまうことがあります。

そこで教室の時計と同じ絵をかき、そこに終了時刻の針を描いて示すなど、「どうなったらおわりになるのか」を目に見える形でわかるように伝える配慮が大切です。

 

自閉症スペクトラム 豆知識

脳の機能障害が関係している

引用:チャクラと脳の関係 – チャクラ脳活性健康法 (konkanjizai.com)

自閉症スペクトラムの原因はまだ解明されていませんが、

脳の前頭前野、側頭葉、偏桃体などの働きの低下が何らかの関連があるのではないかと考えられています。

前頭葉(ぜんとうよう)【前頭前野】(ぜんとうぜんや)

脳の機能全体の制御やワーキングメモリの働きなどにかかわる部位

下前頭回という部分に他人の動作や表情を見て、自分に置き換えて考える機能がある。

障害されると人に共鳴したり共感したりすることが困難になる。

側頭葉(そくとうよう)

言葉の発達や記憶、表情から気持ちを理解する事などにかかわる部位

顔を見て誰かを判別したり、表情や体の動きから人の意図や感情を推測・理解したりする機能

障害されると人の判断や、相手の感情を読み取ったりすることが困難になる。

偏桃体(へんとうたい)

本能的な恐怖心や不安、不快感などのコントロールにかかわる部位

障害されると本能的な感情がコントロールできなくなり、些細な事で恐怖や不快感を感じたりする。

大脳辺緑系(だいのうへんえんけい)

情動や感情、記憶の形成や記憶の保持、言葉の発達などにかかわる部位

 

他にも発症とかかわりがあるとみられる部位は複数ありますが、それらの機能障害だけでは病態の説明はつきません。

なので脳全体の回路形成にかかわる障害ととらえる方が合理的なのです。

全身運動や手先が不器用

自閉症スペクトラム症の特性を持つ子は、脳からの指令がスムーズに手足に伝わらず、その結果不器用になってしまうところがあります。

例えば、私たちもプロの歌手の歌をたくさん聞いたからといって、上手に歌えるわけではないので、見たり思ったりしたことが、そのままできるわけではありません。

自閉症スペクトラム症の特性を持つ子は、私たちが普段、無意識に出来てしまうような、歩く、走る、座る、姿勢を保つといった日常生活の様々なところで同様な事が起こりやすいのです。

身体のイメージが希薄な場合もあり、顔のどの辺に口があるのか、どこまでが自分の足で、どこからが床なのかがわからない子もいます。

私たちが歯の治療で麻酔を打った時の感じに似ているかもしれません。

背中や腕があたるくらい狭い所にいると気持ちが落ち着くという子がいますが、これは身体イメージが分かりやすくなるためかもしれません。

併存しやすい障害

併存症とは病気や障害を発症したときにすでに併せて持っていた疾患のことです。

ここでいう「併存している障害」とは自閉症スペクトラムの原因となっている脳の機能障害に関連して生じている障害という意味で併存症と呼んでいます。

併存症がある場合、自閉症スペクトラムの症状のみに対する治療や支援だけでなく、併存症への対応も必要になります。

知的障害(精神遅滞)

何らかの原因(原因の8割は不明)により知的な発達に障害があり、言語発育などにも遅れが生じた状態をいい、一般的にはIQ70以下を指します。

知的障害は重症度に応じて分けられます。

自閉症に併存するケースでは、知的障害が重くなるほど自閉症の症状も重くなります。

  • 軽度 IQ50~70
  • 中度 IQ35~50
  • 重度 IQ20~35
  • 最重度 IQ20以下

ADHD【注意欠陥多動性障害】

不注意 注意散漫で忘れっぽい

多動性 落ち着きがなくじっとしていられない

衝動性 深く考えずに突発的な行動をとる

などの特徴があります。

こうした行動特性も、自閉症スペクトラムと同様に、脳の機能障害が原因で起こっていると考えられています。

ADHDの発症率は3~5%といわれていますが、自閉症スペクトラムとADHDを併存しているケースは珍しくありません。

【自閉症スペクトラムとADHDの類似点】

例えば、「トランプで遊んでいる友達の手札を他の子に教えてしまう」という

どちらの子にも起こりうる不適応行動

自閉症スペクトラムの子ども ⇒ 手札が分かってしまったらゲームが成立しなくなる事がわからない

ADHDの子ども  ルールがわかっていながら衝動的に不適応行動をとってしまう

適応行動がすぐにとれないという点だけ見ると、自閉症スペクトラムとADHDは似ているために、幼いうちはどちらの障害か見分けにくい事が多いです。

LD【学習障害】

学習障害は知的な遅れがないにもかかわらず、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するといった能力のうち、特定の物の習得が著しく困難な状態を指します。

学習障害の8割はディスレクシア(読み書き障害)を抱えていると言われており、学習障害の中核にディスレクシアがあると考えられます。

この他、音読や、黙読が不得意、文字が正しく書けない、計算が苦手、図形の理解が困難、文章文字がとけないなどもあります。

てんかん

てんかんは脳内で起こるてんかん発作神経の激しい電気的な興奮を特徴とする病気です。

子どもに起こるてんかんの大半は生まれつきのもので、原因不明のケースが多いとされています。

一般のてんかんの有病率は0.5~1%ですが、自閉症の子どものてんかん発作の発症率は15~25%といわれやや高い確率であることがわかります。

てんかん発作を起こさない人も含めると、てんかんに特有の脳波異常がみられる割合は、自閉症全体の約半数にものぼるとされています。

こうしたことから、自閉症スペクトラムとてんかんには、脳機能の障害においてなんらかの関連性があるのではないかと考えられています。

発達性協調運動障害

発達性協調運動障害は、別々の動作を連動させて行う運動がぎこちない状態を指します。

体操やボール運動、縄跳びなどの粗大運動だけでなく、ボタンの留め外しやハサミ、鉛筆の使い方などに代表される微細運動にも不器用さがみられます。

発達性協調運動障害は自閉症スペクトラムだけでなく、発達障害全般に併存しやすい障害であることが指摘されています。

睡眠障害

睡眠障害も自閉症スペクトラムの子どもによくみられる併存症です。

なかなか寝付けない入眠困難や、睡眠中に目が覚めてしまう中途覚醒などの症状がみられます。

睡眠障害の原因はまだはっきりとわかってはいませんが、自閉症スペクトラムに特有の不安や恐怖の強さ、神経過敏などが睡眠を妨げているのではないかと考えられています。

遺伝子との関りが深い

複数の遺伝子の異常

自閉症スペクトラムには複数の遺伝子の影響があり、ひとつの遺伝子の異常によって発症するものではないということが言われています。

ひとつの遺伝子の異常によって発症する病気の場合は、もし特定の遺伝子に異常があれば、高い確率でその病気にかかります。(遺伝病

しかし、複数の遺伝子の異常が関与している場合、該当するいくつかの遺伝子に異常があったとしても、発症する事はありません。

自閉症スペクトラムになるリスクは高いとは言えますが、発症するかどうかはわからないのです。

その意味で「遺伝の病気」とは呼べても「遺伝病」とは呼べないのです。

兄弟姉妹の発症率の差

【一卵性双生児の発症率】

40~98%

遺伝子の一致率が100%の一卵性双生児の場合、二人とも自閉症スペクトラムとなる確率が高くなります。

【二卵性双生児の発症率】

5~10%

遺伝子の一致が50%の二卵性双生児の場合、一方だけが自閉症スペクトラムとなる確率が高くなります。

また双子ではない兄弟姉妹で見ると、自閉症の子の兄弟姉妹が自閉症である確率は5~10%で自閉症の発症率は約0.1%なので、同じ遺伝子を持つ兄弟姉妹が共に自閉症となる確率は、自閉症の兄弟姉妹がいない人よりも少しだけ高くなる程度だと言えます。

環境要因が否定される理由

もしも家庭環境が原因で自閉症になりやすかったとしたら、二卵性双生児のように同じ日に生まれ、同じ環境で育った子ども達は、ともに自閉症になりやすかったり、なりにくかったりしなければならないはずです。

事実はそうではないので自閉症スペクトラムの発症原因は、育てられ方や環境にあるのではなく、遺伝的要因にあると考える方が自然なのです。

さいごに

いかがでしたか?

私自身、自閉症スペクトラムの息子がいるので、この記事を書いていて改めて勉強させてもらいました。

発達障害の特徴は書いてあること全部当てはまるわけではないですが、日常生活のなかでこれもそうだ!あれもそうだ!と思い当たる事がたくさんあります。

特性について少しでも自分の頭に入れておくと、自閉症スペクトラムの人と関わるときに、相手の事を理解しやすくなり、歩み寄って行けるのではないでしょうか

少しでも参考にしてもらえたら嬉しいです。

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