自閉症スペクトラムを理解する 特徴①コミュニケーション こだわり

発達障害
Group of diverse kids with blank speech bubbles

この記事では自閉症スペクトラムの子どものコミュニケーションや対人関係の具体的なつまずき方を特徴として記事にしました。

自閉症スペクトラムの子どもと関わる機会のある方の参考になれればうれしいです。

Contents

自閉症スペクトラムって?

発達障害の中に分類されています。人と上手にかかわれない障害。
自閉症スペクトラムは自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群などの名称がつけられていた自閉性障害の仲間を区別せずに、ひとつの障害としてとらえるためにつけられた総称です。

 発達障害

  • 知的障害(知的発達症)
  • 自閉症スペクトラム(自閉症スペクトラム症)
  • ADHD【注意欠陥多動性障害】(注意欠如多動症
  • 学習障害【LD】(限局性学習症
  • 発達性協調運動障害(運動症)

自閉症スペクトラム3つのタイプ

自閉症スペクトラムは知的障害が全くない人もいれば、比較的重い人もいます。

また、特性が強く現れる人もいれば軽い人もいるなど幅広い病態の人を含んでいます。

さらに、ある特性は強く現れても、別の特性は目立たないなど人によって異なります。

高機能自閉症 アスペルガー症候群 自閉症
知的な遅れはない 知的な遅れはない 知的障害がある
言葉の遅れがある 言語能力は高い 言葉の遅れがある
こだわりがある こだわりがある こだわりがある
社会性に乏しい 社会性に乏しい 社会性に乏しい

これらはすべて自閉症スペクトラムに含まれます。

自閉症スペクトラムの特徴

コミュニケーションや対人関係につまずきがある

見えないことを理解するのが苦手

見えない事というのは自然に決まっているルール。言葉にしなくてもみんなが共有している「常識」のことです。

例えば私たちはレストランで、勝手に他の人の席に座ったり、厨房に入ったり、レジを触ったりはしません。これは私たちが「自分の領域」と「他人の領域」、「踏み込んでよい場所」と「踏み込んではいけない場所」を区別しているからです。しかし、領域を示す境界線は目には見えません。

自閉症スペクトラム症の子どもは、目に見えない事や絵にしにくい事を理解することが苦手なため、悪気がなく他人の領域にためらわずに踏み込んでしまう傾向があるのです。

雰囲気を感じ取ること

幼児でも叱られるとシュンと肩を落とし「もう怒ってない?」と相手の感情を確かめようとします。

もっと年齢が上がると、どうしたらいいのかわからない状況では、静かにして黙ることでその場に適応しようとします。

お葬式なんかでも、理由はわからないが周りの大人が神妙な様子でいると、それを察してこの時間は静かにしようと頑張ろうとします。

しかし自閉症スペクトラム症の特性を持つ子はその場の雰囲気を感じ取ることが苦手です。

そのため叱られている最中やお葬式の席でも、自分が歌いたければ歌う、面白い事があれば笑い出します。

静かにしなければいけない場面で、自閉症スペクトラムの特性を持つ子は周囲の様子を察知することは苦手ですが、「静かにしましょう」というアナウンスだったり、側にいる人が「静かにするんだよ」と教えてあげれば、その場にふさわしい行動をとることができます。その子にとってわかりやすく伝えることが大切です
表情を読むことが苦手

人から話しかけられても反応できなかったり、自分がこう言ったら相手がどう思うか、ある状況に置かれている人がどんな気持ちでいるかといったことを的確に想像したりすることが苦手なのです。

表情から心情を想像できない

定型発達の子どもは、赤ちゃんの頃から身近なお母さんやお父さんの顔を見て、その表情や声のトーンを注意深く見聞きして、親の意図を理解するトレーニングを知らず知らずのうちに繰り返しています。

しかし自閉症スペクトラム症の特性を持つ子は、そうした経験の中での訓練がなかなかできません。そのため相手がどう感じているかを察することが出来ないのです。

たとえ親の表情は読み取れるようになったとしても、他の人の顔を見て同じように表情を読むことは難しいようです。

自閉症スペクトラムの人の場合、顔が違うと表情の読み方もまた一からやり直さなければならず、親の表情の読み方を他人で応用することが難しいのです。

思ったままを言ってしまう

表情を読むこと以前に、自分以外の人が何かを感じたり、思ったりしているという事に考えが及ばない面があります。

自分の言動によって相手が喜んだり、悲しんだり、怒ったりするという事を予測しにくく、周りに配慮しないまま無頓着に行動してしまう傾向があります。

例えば、転んでけがをして泣いている友達に「大丈夫?」とは言わずに「どうして泣いているの?」といった言葉を悪気無くかけてしまいいじわるな子といった誤解をされてしまうこともあります。

本人は思った事を正直に言っただけなのになぜいけないのかが理解できず、戸惑ってしまうことになります。

【ごっこ遊びが苦手】

ままごとでは、友達がお母さん役になったり、自分が赤ちゃん役になったりします。

そうした遊びの中の「設定が理解できません。目の前の友達はあくまで「○○ちゃん」であり、その人をお母さんと見立てて「お母さん」と呼んだりすることはできないと考えてしまいます。

そのため他の子と同じように、遊びの世界に入り込むことが出来ないのです。

四角い積み木を自動車や電車に見立てて、床の上を走らせて遊んだり、新聞紙を細長く丸めた物を剣に見立ててヒーローごっこをすることも苦手です。

積み木は積み木。新聞紙は新聞紙。にしか見えないので空想の世界で遊ぶことが難しいのです。

【心の理論が形成されにくい】

心の理論とは自分以外の人間にも心があるということを理解し、他人の心の動きを理解・推測するとともに、その人がどんな行動を取るかを予測する能力。

心の理論はだいたい4~5歳頃に形成されると言われてますが、自閉症スペクトラムの特性を持つ子どもの場合、その時期が遅れる傾向があります。

心の理論の発達が遅れていると、自分が知っていても他人が知らないことがある、他人が知っていても自分が知らないことがあるといった理解もむずかしくなってしまいます。

自閉症スペクトラムの人も遅れながらも少しずつ「心の理論」が形成されていくとかんがえられています。

 

臨機応変ができない

その場の状況に応じて自分の振る舞い方や会話の内容を柔軟に変えることが苦手です。

初対面の人にどれくらい親しく接していいのかもわかりにくいようです。

そのため、自分が知りたいことがあれば初対面の人でも躊躇なく体重や家の部屋の数などを聞いてしまう事があります。

道徳心を育てるつもりで「嘘をついてはいけません」と教えると、太っているクラスメイトに対して「太っているね」と思った事を悪気無く伝えてしまいます。

確かにウソではありませんが相手がそれを聞いて悲しむという事よりも事実を伝えたい気持ちの方が勝ってしまうということなのかもしれません。

他人に関心がない

赤ちゃんは「おなかすいた」「おむつが濡れて気持ち悪い」といった自分の気持ちを泣いたりぐずったりすることで伝えて、適切な世話や保護をしてもらおうとします。

アイコンタクトによるコミュニケーションがとれるようになると、あやすと笑ったり、ハイハイで親の後ろを後追いしたりするようになります。

そして目の前に蝶々がいたら、指をさしてそばにいる人にその蝶々を見るように促そうとします。

自閉症スペクトラム症の特性をもつ赤ちゃんは人への関心が薄く、不安も強いために、こうした様子が見られない事があります。

蝶々が飛んできても、周囲に期待する指さしをしなかったり、親が蝶々を指してもそちらに目を向けなかったりします。興味や関心を共有しようとしません。

言葉をなかなか話さない

自閉症スペクトラム症の特性を持つ子は言葉をなかなか話さない傾向があります。

欲しい物があっても「おもちゃ取って」とは言わず、欲しい物がある場所まで親の腕を掴んで連れて行こうとします。【クレーン現象

自分が話したいことだけを一方的に話し続けたり、言葉の響き自体が心地よくて同じフレーズを何度も口にしたりすることがあります。

また相手の話していることが理解できないときは、相手の言葉をそのまま繰り返すことがあります。オウム返し。【エコラリア

あいまいな表現はわかりません

自閉症スペクトラム症の特性を持つ子は、抽象的な表現を具体的に想像したり、過去の経験や知っている事実を集めて概念化する力が弱いため「きちんと片づけて」の「きちんと」が何を指すのかがよくわかりません

  • あいまいな言葉「ちょっと」「すぐ
  • 抽象的で絵にしにくい言葉「優しい」「平和」「危険
  • 遠まわしな表現「そろそろ時間だよ」「好きにしなさい
  • 慣用句「顔が広い
短く具体的な言葉をかけるように配慮しましょう。
また目に入った情報(視覚的情報)の方が伝わりやすいので、何か伝えたいときは絵や書き文字で目に見える形にすると理解しやすいです。

こだわりが強く、変化に対応することが苦手

こだわることで安心します

自閉症スペクトラム症の特性を持つ子は、想像力を発揮して思いをめぐらせることが苦手なために、ちょっとしたことでも不安や緊張を感じやすいところがあります

予期しないことにワクワクしたり、サプライズを喜んだりするような感情を持ちにくく、できればいつも通りの平凡な毎日を送りたいと思っています。

見通しの立ちにくい状況では、特定の物や事柄を繰り返し考える、書く、口にする、といった同じ行動を繰り返すなどのこだわりを持つことで、自分なりのいつも通りを獲得し、不安や緊張を和らげようとしているのではないかと考えられています。

もしくはこだわりから生まれる規則正しさや身体感覚に、美しさや心地よさを感じて、その言動を繰り返すようになるという意見もあります。

コレクションが好き

こだわりは膨大な知識の暗記などとして現れることがあります。

車、電車、バス、飛行機、信号、日付、数字、地理、ロゴマーク、本、くるくる回るもの、光るもの、特定のテレビ番組、パソコン…

など色々ありますが、共通しているのはその物自体の形や図柄が変わらない物であることが多いようです。

日本全国の駅名や世界の国旗、年齢に不相応に円周率や漢字、英単語を覚えていたりします。

また集めたミニカーをその子なりの秩序にのっとって並べることを好む子もいます。

常同行動がみられる

常同行動

身体を揺らす、クルクル回る、手のひらをヒラヒラさせる、ソファやベッドの上でジャンプするなど、同じ動作をずっと繰り返す。

紐を振り続ける、においを嗅ぐ、特定の物や空間(木漏れ日など)を見つめる、水や砂の感触を楽しむなど…

いずれの行動もそれをやることに深い意味はなく、本人は何かに突き動かされるようにやっています。

クセのようなものと受け止めて、無理にやめさせるのは禁物.常同行動を無理にやめさせると、不安が大きくなり、パニックになってしまったり、常同行動がエスカレートしてしまう事もあります。
変化を受け入れることが苦手

ルールにこだわる

ルールがあると物事を予測しやすくなり、変化による不安やパニックを避けやすくなるため、一度覚えたルールを厳格に守ろうとする子もいます

他人が順番やルールを守らないことにも厳しい目を向けがちです。

しかしルールはみんなが気持ちよく暮らすための基本であり、絶対条件ではありませんので、その場の状況によって柔軟に対応することが求められます。

どんなルールにも例外があり、ときには少しくらいルールを破っても許される状況があるという事を理解してもらうには、そうしたことを伝える人との間に理解し合い、安心し合える関係性が作られていく必要があります。

行事や課外活動も苦手

運動会や遠足などの行事があり、いつもと違った環境で、違った行動をしなければならない様な状況というのは、自閉症スペクトラム症の特性を持つ子にとって非常に大きなストレスになります。

日常とは異なる雰囲気、場所、知らない人がいる環境などが、子どもを不安にさせ、緊張させることになるのです。

そのストレスが許容範囲を超えてしまうと、どうしたらいいのかわからず混乱し、泣きわめく様なパニックを起こしたりしてしまいます。

見通しが立ち、その子にとっての「いつも通り」「予測通り」に物事が進むと安心します。

場所や配置の変化にも敏感

電車に乗った時に、いつも立つ位置を自分で決めている場合、そこに誰かが先に立っているだけで不安になり、ソワソワしてしまいます。

学校で席替えやクラス替えがあると、自分が安心して過ごせていた席や、教室から離れることになり、不安が強くなります。

物の配置にも敏感で、部屋の模様替えをしたり、掲示物を変えたりすることを嫌います。

家具などの置き場所が変わっていたり、見慣れない物が置かれていたりするだけで、自分が知っている部屋と認識できなくなり不安になってしまうのです。

さいごに

いかがでしたか?

自閉症スペクトラムの特徴といっても人によって、全く違うので、特性の様な気になる行動をしたと思ったら、どうしてこのような行動を取ったのかを観察したり調べてみると、必ず何かしら理由が見つかるはずです。

特性を少しでも理解して歩み寄ってあげることが大切だと思います。

私の息子も2歳前に自閉症スペクトラムと診断されましたが、日常生活を見ていると、だいぶ落ち着きがなく、突発的な行動も結構とるので、歳を重ねていくとADHDの診断も出るのではないかと思っています。

自閉症スペクトラムを理解する 特徴②では、色々な感覚過敏によって困っている子がいる事や原因といわれている脳の機能障害について、併存症や遺伝子のかかわりについて触れていきたいと思います。

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