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発達障害の特性は「個性の延長線上にあるもの」
発達障害の子ってどんな子?
- 活発な子
- 人見知りする子
- 物おじしない子
- 引っ込み思案の子
- せっかちな子
- マイペースな子
挙げていったらキリがありませんが、色々なタイプの子がいて
子どもが10人いれば10人それぞれに性格や行動が異なります。
大人でも人それぞれ性格や行動がちがいますよね!
この性格や行動の違いは一般に「個性」といわれるもので、それ自体が良い悪いというものではありません。
個性という視点から考えると発達障害の特性を持つ子供たちは、「周りの人よりやや個性が強め」と考えていいと思います。
このように個性が強くて、簡単には分かり合えない部分があるために、細やかな工夫や支援を必要とする子供の個性的な特性を、医学的にグループ分けにして、わかりやすい個性として説明しようとしたのが「発達障害」という名称といっても良いでしょう。
なので発達障害の特性は個性の延長線上にあるものであり、決して特別なものではありません。
特性のひとつひとつを見ていくと、私たちも持ち合わせているものばかりです。
その特性の度合いが強かったり、たくさん集まったりするので、その子が毎日不安なく明るい気持ちで過ごすためには、特性を理解したうえで生活の工夫や支援が必要となります。
発達障害は劣っているということではありません
発達障害の特性を持つ子どもは、みんなと同じようにできない面ばかり注目されやすいですが、他の子どもと同じように出来ることもたくさんありますし、他の子どもより良くできる力もあります。
例えば
- すべての記憶が絵や写真のような貯えられ方をしていて、記憶力がとても良い。
- 数字や音符を使って考える事が得意で、独学でパソコンやピアノ演奏ができたりする。など…
見たり聞いたり、触ったり味わったりする受け止め方や感じ方が個性的であるために、得意な事と不得意な事の差がはっきりしてしまうだけなのです。
しつけ不足や心の病気が原因ではありません
発達障害には
自閉症スペクトラム症
自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群を区別せずに、ひとつの障害としてとらえる為につけられた総称。『人と上手にかかわれない障害』社会性やコミュニケーション、想像力において困難がみられる。
ADHD【注意欠陥・多動性障害】
注意力が散漫(不注意)、落ち着きがない(多動性)、衝動的な行動をとることがある(衝動性)など自己コントロールがうまくできない障害[注意欠如多動症]
LD【学習障害】
「読む」「書く」「計算する」などの学習能力のうち、特定の能力の習得に著しい困難を示す障害です。(限局性学習症)
などがあります。
近年、発達障害の研究が進み、医学的には生まれつき脳の機能障害であることが広く知られるようになり、理解が広がりつつある中で、子ども本人や家族が誤解によって追い詰められてしまう事も少しずつ防げるようになってきました。
しかし以前は
ADHDの子の特性は自分の気持ちを抑えることが苦手で周囲と折り合いをつけにくいことから
小さな子どもの行動によく似ているため「わがままな子」という誤解を受ける事が少なくありませんでした。
親もしつけ不足や子供への愛情不足ではないかと自分を責めてきたのです。
自閉症スペクトラム症においては「自閉」という言葉から自分から心を閉ざしてしまう「心の病気」だと誤解する人が多くいました。
本人は生きづらさを感じて悩んでいます
特性は脳が「正しい命令」を出している結果
特性の一つである強いこだわりには、他人には共感しにくいものがあり、たとえ親でもその対応に戸惑うことが少なくはありません。
カッとなって相手を叩いたり、順番を待つことができなかったりする行動は、「乱暴な子」「わがままな子」といった白い目で見られがちです。
この時点での特性は「症状」になります。
この周囲を困らせる症状が、実は発達障害の特性を持つ子の脳が「正しい命令」を出している結果なのです。
問題児の様に映っても、それは「脳からの正しいし指示による自然な振る舞い」なので本人は決してふざけたり、わざとしているわけではないのです。
子どもからのメッセージであり、声なき訴えだと受け止めてあげることが大切です。
周りの理解が特性を目立たなくさせる
発達障害の特性があっても、小さい頃から周囲の人たちに理解されて育った子どもの中には、安定した状態で子ども時代を過ごし、成人して社会で働きながら自立した生活を送り、希望に満ちた人生を歩む人もたくさんいます。
小さい頃から無理解や誤解の中で過ごし、否定され続け、叱られ続け、無理強いをされ続けた子どもの中には「私はダメな子なんだ」という強い劣等感を抱き、混乱したまま大人になり、引きこもりなどの辛い状況にいる人もいます。
発達障害の特性は周囲の理解が深まるほど目立たなくなり、逆に無理解が強まると目立ってしまうという面があります。
治ったり消えたりするものでもありません。
特性を早期に正しく理解することは子どもの生きづらさを和らげて成長を促します。
発達障害は関係性の障害でもある
家族、学校、社会は人とのコミュニケーションがとても大切な場所です。
特に学校や社会は多くの人が同じ行動をとったり、同じルールを守ったりすることで保たれています。
発達障害の特性を持つ子はその強い個性から、周囲と折り合いをつける事が難しい場合があります。
コミュニケーションをとって人間関係を作っていくことが苦手です。
お互いに分かり合える様な関りを作り出すことが難しいため、孤立してしまう場合もあります。
ひとりでいる方がホッとする子もいますが、もしかしたら「ひとりでも平気」と言っている子の中には、集団に馴染めず仕方なくひとりでいて、孤独を感じている子がいるかもしれません。
「定型発達」と「発達障害」明確な境界線はありません
線引きはとても難しい
定型発達の子どもにおいても、発達障害の子どもような強い個性が見られることはありますし
発達障害の子どもにおいても、定型発達の子どもの部分があります。
日本では、自閉症スペクトラム症、ADHD(注意欠陥・多動症)、LD(学習障害)など脳機能の障害による特性が、主に低年齢で現れて、深い理解と支援が必要とされるときに「発達障害」と呼んでいます。
線引きはとても容易ではありません。
地図に例えると、定型発達と発達障害は2つの離れ小島ではなく存在しているとします。
2つは繋がり合っていてとりあえず、国境線で分けている様なところがあるのです。
「障害」の意味をとらえる
発達障害という言葉には「障害」という文字が入っています。そのため、その重い響きに落ち込んでしまう親御さんは少なくありません。
ですが、発達障害という言葉は子どもにレッテルを張るためだけではなく、子どもの生きづらさを和らげ、子どもと支援を結びつけるために「特性を共有する」という役割を持っています。
簡潔に言うと、「発達障害」という診断名はその子と支援を結びつける為のひとつの方法。
大事なことは、子どもが頑張っているにもかかわらず成果が上がらない場合、その原因がその子の努力不足にあるのではなく、特性によるものであることに、周囲も本人も早く気づく事です。
そしてどうしたらその子の能力が伸びて成果に結びつくのか、生きづらさが和らぐのかを考えて、配慮のある環境や支援体制を整えることです。

強い個性はなぜ現れるのかしら?
どうして個性が強くなるのかについては、生まれつき脳の機能にアンバランスさがある為ではないかという事が想定されています。
その結果、コミュニケーションや認知、運動、行動、学習、社会性などの能力が偏ると考えられています。
なぜ脳の機能にアンバランスさが現れるのか、スムーズに働かないのかについては原因がまだよくわかっていないのが現状です。
脳の機能が発達障害に関係あるのでは?
脳内の情報がスムーズに伝わらない状態
仮説のひとつに「感覚のネットワーク機能不全」があります。
私たちが物や状況を認知するときは、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚など様々な感覚を使います。
例えば視覚の場合、眼が「りんご」という文字をとらえると、それが神経を伝わって脳にたどり着き、そこで初めて「りんご」と認識します。
発達障害の特性を持つ子は視力は悪くないので「りんご」という文字を眼でとらえることはできますが、それが神経を伝わって脳にたどり着く過程で、何らかの機能的な障害が起こり、「りんご」と認識できないということです。
これはLD(学習障害)の特性の一つである、教科書に書いてある活字を見分けられない事などに繋がります。
視覚 ⇒ 聞き分けにくさと聞き間違え
味覚 ⇒ 偏食
触覚 ⇒ 人との接触を嫌がる、特定の服の素材しか受け付けない
脳の司令塔・前頭前野の働きが弱いと言われている
引用:チャクラと脳の関係 – チャクラ脳活性健康法 (konkanjizai.com)
前頭葉(ぜんとうよう)【前頭前野】(ぜんとうぜんや)
脳の機能全体の制御やワーキングメモリの働きなどにかかわる部位
側頭葉(そくとうよう)
言葉の発達や記憶、表情から気持ちを理解する事などにかかわる部位
大脳辺緑系(だいのうへんえいけい)
情動や感情、記憶の形成や記憶の保持、言葉の発達などにかかわる部位
偏桃体(へんとうたい)
本能的な恐怖心や不安、不快感などのコントロールにかかわる部位
脳には前頭葉という場所があり、その中に前頭前野があります。
前頭前野はサッカーで言えば司令塔、オーケストラで言えば指揮者のような役割をしていて、脳の多様な機能をコントロールしています。
感覚器を通して得た情報を使い、物や自分の置かれている状況の認識をしたり、過去の膨大な記憶の中から必要な物を取り出したりします。
発達障害の特性を持つ子の中に、優先順位をつけたり、一度に複数のことをするのが苦手な子どもがいるのは、この前頭前野の働きが弱いためという説があります。
例えば、授業中に先生が話をしているとき、たいていの子どもは先生の話を聞こうとします。
ですが、発達障害の特性を持つ子の中には、窓際に小鳥が飛んで来たら先生の話を聞く事よりも、小鳥をみることが優先されてしまう子どもがいるのです。
これは情報を一時的に保つ「作業記憶」というワーキングメモリの働きがの弱さと考えられています。
最初は「先生の話を聞く」という命令が出ていますが、その命令が出続けないために、優先順位が混乱するのではないかとも考えられます。
これはADHDの特性である、落ち着きのなさや衝動性を説明するひとつの仮説になっています。
複雑な作業が苦手
その場でジャンプはできるけど、跳び箱は飛べないという子もいます。
跳び箱は、跳び箱のある場所まで走り、タイミングよく前方へ開脚しながらジャンプして…と以外に複雑な動きをします。
このような行動が上手にできない子どももいますが、こうしたことも脳内のネットワークの働きに何らかの障害があることを説明するひとつの仮説となっています。
発達障害の特性のあらわれ方は十人十色です
特性のあらわれ方は同じ障害名でも異なる
ひとつの発達障害の特性は、他の発達障害の特性とも重なり合っています。
さらに定型発達の子の個性とも重なり合い、連続しています。
そのため同じ障害名であっても特性のあらわれ方は異なり、強さも人それぞれ違います。
同じ自閉症スペクトラム症でも特性の程度が重い子どもは、言葉を発しなかったり、呼びかけに答えなかったりしますが、程度が軽い子どもは目線が合いますし、自分から話しかけたり積極的に人と関わりを持とうとしたりするものです。
療育などによって特性は目立たなくなる
発達障害の特性は年齢を重ねていくと目立たなくなることもあります。
治ったり消えたりしたわけではなく、療育などを通じて、社会的な経験をたくさん積み、困っている症状の多くに折り合いがついて、特性が目立たなくなったと考えます。
療育のひとつにTEACCH(ティーチ)というものがあります。
その場にふさわしい発言をしたり、行動をとったりするためのもので、生活や社会でのルールを学んでいく「生活プログラム」ともいえるものです。
子どもの特性を周囲が理解し、何で困っているのかをよく観察して、生活や社会のルールをわかりやすく覚えられるように工夫することで、それが社会的な適応力になり、生きづらさの軽減にも繋がります。